合理的ADHDという人々

 先日、d:id:Hash:20090611という記事を眺めて、ブクマに

yura_saito 社会, 人生, 仕事, 心理, 考察 ああうん、ADHD系の話だな、と思った。問題は周りがこの手の人の杜撰さや飽きっぽさに耐えられるか、という(遠い目)

http://b.hatena.ne.jp/yura_saito/20090612#bookmark-13931346

とか、書いてたりしたですけど、はてブでそれっぽい人が解雇されてて悲しくなったりしました。

何が上司をそうさせたのだろうか、と少し考えていてある日ああ、そうかもしれないという発見をした。上司はとあるところでブログを書いているのですが、僕と上記のメールのやり取りをした日の夜に書いていたブログの内容をざっくり意訳すると「欠勤しているのにブログを書くような奴は仕事中も手を抜くに決まっているので、会社にとって"悪"だ。組織に伝染する前に"ひねり潰す"」的なことがと書いてあった。

http://kousyoublog.jp/?eid=2291

 ちなみに、ブクマに速攻で該当ブログのURLが貼ってあって苦笑しました。なんだかなぁ。

※元記事が消されていたので、同内容の記事魚拓

 そして、同記事中からリンクを貼られたご本人の成育歴を拝見するに、おそらく合理的ADHDに限りなく近い方ではないかーとか思ったりしました。レッテル貼りですみませんが。

 合理的ADHDというのは、やんばる先生による独自分類で、ADHDの一種です。知的障害があったり多動がひどいと、早いうちから問題行動として障害の診断を受けたりしますが、多動がそれほどでもなかったり不注意優勢型だったりすると、落ち着きのない人おっちょこちょいな人という変人扱いでそのまま大人になってしまうことも多いです。はっきりとした障害というよりは、脳構造による性格・行動類型といってもいいかもしれません。

 「自分ではきわめて合理的に動いてるつもりなのに、周りから自分勝手で自己中心的、協調性に欠けるという評価を受けてしまってる」と感じてる人は、やんばる先生のADHDの自覚・他覚所見一覧表を見て苦笑いするといいよ。ADHD精神障害として判定するDSMもあるけど、そこまでひどくないADHD風味な人たちが抱えている生活上の問題は、この外部からの見え方と自己の認知のずれからきてるので。

 KYなところや表面的な行動は自閉やアスペ(AS)と似通ったところがあるんですが、本質的に違うのは、「人に執着するかどうか」のようです。つまり、自分を含めて人に執着しないのがADHD。ASには執着対象がいるらしいです。まあ、短期間恋愛感情で過集中的にこだわることはあるんですが、冷めるとさっぱりという…。

 「ADHDサクセスストーリー―明るく生きるヒント集」という本によれば、ADHDはおそらく狩猟民族の生き残りであろう、とされています。30万年にわたって狩猟民族として生きてきた狩人たちは、氷河期の終わり以降発達した農業によって成功した農耕民族に駆逐されました。そしてその狩人たちの生き残りは、現代社会においては10〜5人に1人程度しか残っておらず、農耕民の社会で生きにくいなぁと思いながら生きているというわけです。遺伝子的に確認してみたいですが、現状そこまでは研究されていない模様。残念ですが、なかなか納得のいく仮説だと思っています。

ADHDサクセスストーリー―明るく生きるヒント集

ADHDサクセスストーリー―明るく生きるヒント集

 狩猟生活においては、ADHDのもつ衝動性は「瞬時の決断で行動できる」能力になります。強い刺激である危険を追い求め立ち向かうことを恐れない性格は、狩りには最適です。しかし、来る日も来る日も同じ場所で同じようなタイミングで地道に作物を作るには向いていません。現代社会は農耕社会から発展してきた工業社会で、やはり相変わらず地道な作業が求められ、それほど必要でもないと思うんですが決まった時間に決まった作業をすることを強いられます。そういう農耕民族的社会で、狩人たちが成功できる領域は限られてます。世界を変革するような発明家であったり、指導者、起業家、あるいは芸術家です。

 サラリーマンははっきり言って向きません。毎日同じ時間に起きて、殺人的に混んでる満員電車に詰められて、毎日変わり映えのしない定型業務を黙々とこなし、説明もなく押しつけられた会社の方針に唯諾々と従うようには、この手の人は作られてないのです。そもそも、なんで出勤時間をずらさないのか、なんで新しいことにチャレンジしないのかあるいは不経済な手順を改善しないのか、まともに納得できる説明もできないのか。ストレス溜まりまくります。

 そして、そういう狩人タイプの人たちに、農耕民タイプの人たちは怒りを向け、排除したりもします。

 時間の観念がひどくまちまちなハンターたちにとって、彼らを取り巻く環境から不安定な要素を減らすには、環境が変わるたびに即座に反応し、その場で行動に移すという形を取ります。しかしながら、線の感覚で永続性のある時間を経験するファーマーにとって不安定さを減らすとは、ものごと安定させようと努めることであり、こうした人々は潮の満ち干のごとく確実に、変化を好む人々を追い払おうとするものです。

ADHDサクセスストーリー―明るく生きるヒント集

 ベンチャー企業でも、立ち上げ時期はともかく、軌道に乗った後着実に経営を行っていくには農耕民タイプの人たちが必要です。このとき、変化を望む狩人タイプの人たちが合わなくなって追い出されていくことがありますが、もともと役割が違うことを考えてみたほうがいいです。狩人タイプの人たちの活躍する領域は変革です。状況が変わって大きな波に飲み込まれそうになった時には、そういう人たちのほうが役に立つと思います。適材適所ですよ。

 まあ、でも、ひとつの場所に留まるのも狩人らしくないので、もっと自由に色んなところに行けるというのがほんとはいいんでしょうね。